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お酒の知識

2018/08/05

常温で飲むのが正解?!エールビールの種類とおすすめ銘柄

BAR岩田のウイスキー千夜一夜

初心者のためのBARノウハウ「BAR虎の巻」

岩田 智

提供:岩田 智

ヒューガルデンホワイト置いてます!三宮・北野「Bar岩田」のマスター。

ビールはキンキンに冷やして飲むもの!ぬるいビールは不味い!と思っていませんか?たしかに、日本の生ビールは冷やして飲むのが美味しいですが、実は常温のほうが美味しいビールも存在するんです。それは「エールビール」と呼ばれるビールで、エールビールは冷やし過ぎず、常温が美味しく飲める温度とされています。海外ではエールビールが主流の国も多く、海外で飲んだビールがぬるかった時はエールビールだった可能性が高いです。最近では、日本でもエールビールを多く扱うお店が増え、スーパーやコンビニでも手軽に購入できるようになりました。

この記事ではエールビールの種類について解説し、エールビールの種類ごとにオススメのビールもいくつか紹介していきます。

エールビールとは?

ビールは原料である大麦麦芽を発酵させて作ります。発酵が進むとビール酵母が、上面に浮かんでくる「上面発酵」という製法で作られたビールの事をエールビールと呼びます。「上面発酵」は高温で発酵させるため、発酵させる期間は3〜4日と短く、高温で酵母が活発になり、香りが良いビールになります。とてもフルーティでコクがある味わいがエールビールの特徴です。

エールビールの歴史はとても古く、エールビールの製造方法である「上面発酵」はまだ冷蔵技術がなかった頃からの製法です。日本では少し前からスーパーなどで見かけるようになりましたが、海外では古くから愛されているビールです。

エールビールとラガービールの違いは発酵方法

エールビールは発酵が進むと、ビール酵母が上面に浮かんでくる「上面発酵」という方法で作られていますが、発酵が進むとビール酵母が下に沈んでいく「下面発酵」という方法で作るビールが「ラガービール」と呼ばれるビールです。
「下面発酵」は冷蔵技術が発達し、低温での長期保存ができるようになり、可能になった製法で上面発酵よりも歴史は新しくなります。

ラガービールの特徴は、キリッとした後口と爽快なのど越し。爽快感が特徴のラガービールは、キンキンに冷やして飲むのが美味しく、日本で飲まれているビールのほとんどがこの「ラガービール」です。

エールビールは「常温」で飲むビール

エールビールは、もともとイギリスやアイルランドなどの涼しい気候の国・土地で美味しく飲めるように作られたビールです。涼しい気候の中では、キンキンに冷やして飲むという習慣がありませんので、常温もしくは少し冷たいくらいの20℃前後で飲むのが、もっとも美味しく飲める最適温度なのです。

また、エールビールの特徴である香りは、常温に近いほうが強く感じやすく、冷やし過ぎると香りを感じにくくなってしまいます。冷やしたビールしか飲んだことがない人も、ぜひ常温のエールビールを味わってみてください!

日本ではエールビールは秋や冬に飲むのがオススメ

エールビールがよく飲まれているイギリスなどの国では、夏でも気温が20℃程なので常温でも美味しく飲めますが、日本の夏場は常温だと30〜40℃以上になってしまいます。いくら「常温」で飲むのががおすすめと言っても、これでは温かくなりすぎて美味しくありません。日本では、気温が20℃前後にまで下がる秋や冬が、エールビールの”旬”とういことになるでしょう。

また、エールビールはアルコール度数が高い銘柄が多いので、暑い時期に飲むと少し重く感じてしまい、夏に飲むにはあまり適しません。

エールビールが日本で冷やして売られている理由

エールビールは常温で飲むのが美味しいのですが、日本ではラガービールと同じように冷やして売られています。

これは、日本では「ビール=冷やして飲む」という考えが浸透していて、ビールを常温で飲む習慣が無いためです。また、日本の気候はエールビールが好まれる地域とは違い高温多湿なので、ビールに爽快感を求める人が多いのも理由のひとつです。

夏でも飲みやすいエールビールもある?!

エールビールはアルコール度数が高い銘柄が多いのですが、中にはアルコール度数5%くらいの銘柄もあります。アルコール度数5%くらいだと重く感じないので、冷やして飲むのもありです。キンキンまで冷やさず、冷蔵庫で30分くらい冷やしてから飲むのがオススメです。

  • 銀河高原ビール 5%
  • 水曜日のネコ 4.5%
  • TOKYO CRAFT (東京クラフト) ペールエール 5%

ペールエール

ペールエールは淡色麦芽と硬度の高い水で醸造されており、淡色=ペールと呼ばれる事からペールエールと名付けられました。エールビールの中でもとても人気の高い種類です。イギリス発祥の「イングリッシュ・ペールエール」と、後にアメリカに渡って作られた「アメリカン・ペールエール」、苦味が特徴的な「インディア・ペールエール」が代表的なペールエールの種類になります。

「イングリッシュ・ペールエール」は、イギリス産のホップを使っていて、ハーブのような芳醇な香りと軽い口当たりが特徴で苦味を強く感じます。イギリスでは定番のビールです。対して「アメリカン・ペールエール」は北米産のホップを使用していて、スッキリとした苦味と繊細な香り、弾けるような口当たりが特徴で日本でとても人気があります。

ペールエールのおすすめ人気銘柄「よなよなエール」

エールビールと言えば「よなよなエール」というくらい人気のビール。スーパーやコンビニで手軽に購入できるのも人気の証ですね。「アメリカン・ペールエール」なので、日本人好みのスッキリとした苦味と、エールビールの特徴である芳醇な香りのバランスが良く、エールビール初心者にオススメです。

  • 生産国:日本
  • アルコール度数:5.5%

IPA(インディア・ペールエール)

ペールエールの種類のひとつである「インディア・ペールエール」はホップの香りと、とても強い苦味が特徴のエールビールです。冷蔵技術がない時代にインドへビールを輸出する際、長期保存に耐えるため、大量のホップを使い防腐処理をしたことから、このIPAが出来ました。現在でもホップをたくさん使用して作られていて、アルコール度数が高いのもIPAの特徴です。

IPAのおすすめ銘柄「インドの青鬼」

IPAの特徴である苦味がしっかり感じられるビールです。苦味は強いのですが、モルトの風味をしっかり感じることができます。ビックリするほど苦味が強いのが特徴ですが、嫌な苦味ではなく、後をひくようなクセになる味わいです。

  • 生産国:日本
  • アルコール度数:7%

ヴァイツェン

ヴァイツェンとは小麦麦芽をとヴァイツェン酵母を使用して作られたビールで、苦味が少なく飲みやすいビールです。「ヴァイツェン」はドイツ語で小麦という意味があります。バナナのようなフルーティーな香りが特徴で、口当たりも滑らかで飲みやすく、ビールの苦味が苦手という人や女性にオススメです。

ヴァイツェンのおすすめ銘柄「銀河高原ビール 」

麦芽やホップだけでなく、ビールを作る上でとても大切な「水」にもしっかりこだわっているビールです。まろやかな味わいを持ち、香りはとてもフルーティーで後味はスッキリしていて飲みやすいのが特徴です。

  • 生産国:日本
  • アルコール度数:5%

ポーター

「ポーター」はイギリス発祥のビールで、ローストした大麦を使用して作られていて、色が真っ黒なのが特徴です。黒ビールとも呼ばれています。「ポーター(Porter)」とは荷運び人の事で、ロンドンで配達していたポーターがこのビールを好んで飲んでいた事から、「ポーター」と名付けられました。炭酸は弱めですが、まったりとした口当たりとローストした麦芽の濃厚なコクが特徴のビールです。泡もとてもクリーミーでまろやかな口当たり。

ポーターのおすすめ銘柄「オールドエンジンオイル」

ポーターの特徴である濃厚なコクとホップの苦味がしっかりと味わえるビールです。ダークチョコレートやブラウンシュガーのような香ばしい中に甘みが感じられる香りも特徴です。

  • 生産国:イギリス
  • アルコール度数:6%

スタウト

「スタウト」は「ポーター」が元となった黒ビールです。「ポーター」はイギリスで生まれ、後にアイルランドに渡り「スタウト・ポーター」になり、最終的に「スタウト」と呼ばれるようになりました。

スタウトもポーターと同じくローストされた麦芽から作られていますが、スタウトの方が苦味が強く、コーヒーのように香ばしい苦味です。ビールの苦味は苦手でも、スタウトは飲めるという人もいるほど、他のビールとは苦味の種類が違います。また、カラメル系の香りで濃厚なコクも特徴のひとつです。

スタウトのおすすめ銘柄「ドラフトギネス」

アイルランドで製造されていて、世界でも人気の高い黒ビールが「ドラフトギネス」です。濃い黒色が特徴で、苦味もしっかりしていて、後味にほのかな甘みが感じられます。

  • 生産国:アイルランド
  • アルコール度数:4.5%

ホワイトエール

ベルギー発祥の「ホワイトエール」は大麦と小麦を原料に使って作られるビールで、他のビールより色がやや白っぽいのが特徴で、白ビールとも呼ばれるビールです。フルーティーな甘味と酸味のバランスが取れた味わいと、滑らかな舌触りが味の特徴です。苦味は弱いので、ビールが苦手な人でも飲みやすいビールです。

ホワイトエールのおすすめ銘柄「ヒューガルデンホワイト」

ベルギーのヒューガルデン村で作られているビールです。りんご、コリアンダー、オレンジなどのフルーティー香りが特徴で、後味は爽やかな酸味が感じられるビールで日本でも人気があります。

  • 生産国:ベルギー
  • アルコール度数:4.9%

バーレイワイン

大麦(バーレイ)で作られたビールで、ワインのように長期熟成させて作られるビールです。アルコール度数がとても高く、普通のエールビールのアルコール度数が5%前後なのに対し、バーレイワインのアルコール度数は8〜12%。半年以上かけて熟成させるのもバーレイワインの大きな特徴です。時間をかけて熟成させるので木樽の香りが移り、ワインのように芳醇で複雑な香りと風味を作り出します。

バーレイワインのおすすめ銘柄「エル・ディアブロ」

悪魔という名前を持つ麦ビールと呼ばれるのが、「エル・ディアブロ」です。バーレイワインの特徴である、高いアルコール度数を出すために、通常の2.5倍の麦芽と6倍のホップを使用しています。熟成された芳醇な深みとホップの苦味が味わいの特徴です。

  • 生産国:日本
  • アルコール度数:10%

フルーツエール

フルーツエールは、ビールの風味とフルーツの風味が楽しめる近年注目されているベルギー発祥のビールです。フルーツエールの作り方は様々ありますが、日本では発酵前にフルーツを加える方法が多く、この方法はジュースのように飲みやすいビールになります。加えるフルーツによって風味や色合いが変わるのが特徴で、ピンクやオレンジなど華やかな色合いも多く、女性に人気のビールです。

フルーツエールのおすすめ銘柄「宮崎ひでじビール 柚子エール」

宮崎県産の柚子を丸ごとたっぷりと使ったフルーツエールです。柚子の上品な風味と爽やかな香りが特徴で、男女問わず楽しめる味わいです。

  • 生産国:日本
  • アルコール度数:5%

セゾン

「セゾン」は元々、夏に農作業をする時に飲むために、農作業がない冬の間に作られていたビールです。当時、生水を安心して飲むことが出来なかったため、殺菌作用のあるアルコール(ビール)を農作業中の水分補給として飲もうというアイデアから生まれました。長期間の保存がきくようにスパイスが多く使われているのも「セゾン」の特徴です。エールビールには珍しく爽快感があるので、夏に飲むのに向いているビールです。

セゾンのおすすめ銘柄「僕ビール、君ビール。」

カエルのイラストが目を引くビールです。キリッとしたホップの苦味と、フレッシュでジューシーな柑橘系の香りが爽快感を感じさせてくれます。口当たりはさっぱりとしていて飲みやすいビールです。

  • 生産国:日本
  • アルコール度数:5%

トラピストビール(アビイビール)

「トラピストビール」は、元々ヨーロッパの修道院で作られていたビールです。その基準はとても厳しく、トラピスト会修道士の協会に所属している修道院が作ったビールだけが「トラピストビール」の名称を使用することができます。
一方、トラピスト会修道士の協会に所属している修道院に許可を貰い、そのレシピを元に一般の醸造所が作るビールを「アビィビール」と呼びます。

トラピストビール、アビィビールともに缶ではなく、瓶ビールなのですが、瓶に詰められた後にも発酵や熟成が進みます。なので同じ銘柄のビールでも製造年数や日数が違うと味わいが違うという特徴があります。アルコール度数が高く、熟成させる事で香りが高くなるのでじっくり飲みたいビールです。

トラピストビールのおすすめ銘柄「オルヴァル」

ホップのしっかりした苦味と、りんごのような爽やかな香りが特徴のビールで、苦味の中にほんのりとした甘みと酸味を感じることができます。食前酒にもオススメのビールです。

  • 生産国:ベルギー
  • アルコール度数:6.2%

まとめ

「キンキンに冷やしたラガービール」が主流の日本でも、最近では常温に近い温度でじっくりと味や香りを楽しむエールビールが増えてきました。

フルーツ果汁がたっぷり使われたエールビールは、日本の苦いビールが苦手な人にオススメしたいビールです。また、購入後に寝かせる事により、発酵や熟成させることが出来るワインのようなエールビールもあります。そして、どのエールビールも芳醇な香りが特徴で、その香りを最大限に楽しむには20度前後の常温が最適です。

この記事で紹介したエールビールの中には、スーパーやコンビニで手軽に手に入るビールもたくさんあります。たまには定番ビールから趣向を変えて、香りと味わいに優れたエールビールを選んでみませんか?

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